現在
経営成績等の概況
1.当期の経営成績の概況
当期における我が国経済は、コロナ禍の影響から脱却し、雇用・所得環境の改善等を中心に、緩やかな回復基調にありました。一方で、欧米における高い金利水準や中国経済減速に伴う影響等が我が国の景気を下押しするリスクとなっています。また、物価上昇、アメリカの政策動向、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響は引き続き懸念されています。
当社グループの業績に大きな影響を及ぼす国際原油価格は、代表的指標の一つであるブレント原油(期近物終値ベース)で当期は1バレル当たり75.89米ドルから始まり、OPEC+による減産緩和の影響やイスラエル・パレスチナ紛争を背景に一時的に乱高下する不安定な局面もありましたが、その後軟調に推移し、期末には74.64米ドルとなりました。これらを反映して、当期における当社グループの原油の平均販売価格は、前期に比べ、1バレル当たり1.63米ドル下落し、81.20米ドルとなりました。
一方、業績に重要な影響を与えるもう一つの要因である為替相場ですが、当連結会計年度は1米ドル143円台で始まりました。年前半は、日銀によるマイナス金利の解除があったものの、緩和的な金融政策の維持や堅調な米経済指標によりほぼ一貫して円安が進行し、6月末には161円台を付けました。7月下旬には日銀が政策金利引き上げを決定した一方、予想を下回る米雇用統計等の結果を受けて米連邦準備理事会(FRB)による利下げ開始観測が高まると日米金利差の縮小が意識され、9月には140円台まで円高が進行しました。10月以降は底堅い米国経済や次期米大統領の政策によりインフレが再燃するとの見方を背景にFRBによる利下げペース鈍化が示唆されたことで円安が進み、期末公示仲値(TTM)は前期末から16円35銭円安の158円17銭となりました。なお、当社グループ売上の期中平均レートは、前期に比べ、11円20銭円安の1米ドル151円73銭となりました。
このような事業環境の中、当社グループの当期連結業績につきましては、期中平均レートが円安に推移したことにより、売上収益は前期比1,013億円、4.7%増の2兆2,658億円となりました。このうち、原油売上収益は前期比1,040億円、6.5%増の1兆7,120億円、天然ガス売上収益は前期比27億円、0.5%減の5,251億円となりました。当連結会計年度の販売数量は、原油が前期比954千バレル、0.7%増の138,978千バレルとなり、天然ガスは前期比6,147百万立方フィート、1.3%減の473,667百万立方フィートとなりました。このうち、海外天然ガスは、前期比6,268百万立方フィート、1.6%減の381,706百万立方フィート、国内天然ガスは、前期比3百万立方メートル、0.1%増の2,464百万立方メートル、立方フィート換算では91,961百万立方フィートとなりました。販売価格は、海外原油売上の平均価格が1バレル当たり81.20米ドルとなり、前期比1.63米ドル、2.0%下落、海外天然ガス売上の平均価格は千立方フィート当たり5.73米ドルとなり、前期比0.11米ドル、2.0%上昇、また、国内天然ガスの平均価格は立方メートル当たり78円24銭となり、前期比11円84銭、13.1%下落しております。売上収益の平均為替レートは1米ドル151円73銭となり、前期比11円20銭、8.0%の円安となりました。
売上収益の増加額1,013億円を要因別に分析しますと、販売数量の増加により67億円の増収、平均単価の下落により577億円の減収、売上の平均為替レートが円安となったことにより1,523億円の増収となりました。
一方、売上原価は前期比672億円、7.9%増の9,153億円、探鉱費は前期比274億円、106.0%増の533億円、販売費及び一般管理費は前期比387億円、40.5%増の1,345億円、その他の営業収益は前期比107億円、42.8%増の358億円、その他の営業費用は前期比925億円、74.6%減の315億円、持分法による投資利益は前期比864億円、470.1%増の1,048億円となりました。以上の結果、営業利益は前期比1,576億円、14.1%増の1兆2,717億円となりました。
金融収益は前期比678億円、31.2%減の1,494億円、金融費用は前期比443億円、56.8%増の1,224億円となりました。以上の結果、税引前利益は前期比454億円、3.6%増の1兆2,988億円となりました。
法人所得税費用は前期比562億円、6.1%減の8,645億円、非支配持分に帰属する当期利益は前期比39億円、36.6%減の68億円となりました。以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比1,056億円、32.8%増の4,273億円となりました。
セグメント別の業績は以下のとおりであります。
当連結会計年度より報告セグメントを変更しており、前連結会計年度との比較分析にあたっては、変更後の区分に基づく前連結会計年度数値を用いております。
- 1. 国内石油・天然ガス事業(国内O&G)
- ガス価の下落により、売上収益は前期比299億円、12.1%減の2,169億円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比287億円、67.8%減の136億円となりました。
- 2. 海外石油・天然ガス事業(海外O&G)-イクシスプロジェクト
- 売上収益は前期比微増の3,732億円となりましたが、探鉱費の増加等により、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比616億円、19.9%減の2,482億円となりました。
- 3. 海外石油・天然ガス事業(海外O&G)-その他のプロジェクト
- 円安及び販売数量の増加により、売上収益は前期比1,296億円、8.5%増の1兆6,579億円となり、減損損失の減少等により、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比1,649億円増の1,657億円となりました。
2.当期の財政状態の概況
当連結会計年度末における資産合計は前連結会計年度末比6,413億円増の7兆3,808億円となりました。このうち、流動資産は現金及び現金同等物の増加等により、前連結会計年度末比317億円増の8,702億円、非流動資産は石油・ガス資産の増加等により、前連結会計年度末比6,095億円増の6兆5,106億円となりました。
一方、負債合計は前連結会計年度末比25億円増の2兆2,430億円となりました。このうち、流動負債は前連結会計年度末比385億円減の5,336億円、非流動負債は前連結会計年度末比411億円増の1兆7,093億円となりました。
資本合計は前連結会計年度末比6,388億円増の5兆1,378億円となりました。このうち、親会社の所有者に帰属する持分は前連結会計年度末比6,127億円増の4兆8,218億円、非支配持分は前連結会計年度末比260億円増の3,160億円となりました。
3.当期のキャッシュ・フローの概況
当社グループの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末の2,011億円に当連結会計年度中に増加した資金143億円及び、換算差額261億円を加えた結果、当連結会計年度末において2,416億円となりました。当連結会計年度における営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フローの状況及びそれらの要因は以下のとおりであります。
- ① 営業活動によるキャッシュ・フロー
- 非資金項目である金融収益の減少があったものの、法人所得税の支払額の増加や営業債権及びその他の債権の増加等により、営業活動の結果得られた資金は前期比1,333億円減の6,547億円となりました。
- ② 投資活動によるキャッシュ・フロー
- 長期貸付けによる支出の増加等があったものの、投資の取得による支出の減少や持分法で会計処理される投資の取得による支出の減少等により、投資活動の結果使用した資金は前期比297億円減の2,904億円となりました。
- ③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
- 長期借入金の返済による支出の減少やコマーシャル・ペーパーの純増減額の増加等により、財務活動の結果使用した資金は前期比1,373億円減の3,499億円となりました。
4.今後の見通し
通期 | 2024年12月期 (実績) |
2025年12月期 (予想) |
増減率 |
---|---|---|---|
売上収益(億円) | 22,658 | 21,190 | 6.5% |
営業利益(億円) | 12,717 | 11,060 | 13.0% |
税引前利益(億円) | 12,988 | 11,570 | 10.9% |
親会社の所有者に帰属する 当期利益(億円) |
4,273 | 3,300 | 22.8% |
次期の見通しにつきましては、売上収益は、第2四半期連結累計期間で当期比9.0%減収の1兆840億円、通期では当期比6.5%減収の2兆1,190億円を見込んでおり、営業利益は、第2四半期連結累計期間で当期比17.7%減益の5,760億円、通期では当期比13.0%減益の1兆1,060億円を見込んでおります。
また税引前利益は、第2四半期連結累計期間で当期比15.9%減益の6,000億円、通期では当期比10.9%減益の1兆1,570億円となる見込みであり、親会社の所有者に帰属する当期利益は、第2四半期連結累計期間で当期比15.3%減益の1,800億円、通期では当期比22.8%減益の3,300億円となる見込みです。
売上収益については、イクシスを始めとする主要プロジェクトにおいて、概ね当期並みの生産活動を維持する中で、前提を当期比で油価安に設定したこと等により、通期で減収の見込みとなっております。営業利益についても、イクシスプロジェクトにおける計画シャットダウンメンテナンス等を要因とした持分法による投資利益の減少等により、当期比で減益となる見込みです。従って、税引前利益および当期利益についても、上記理由に応じて、当期比で減益となる見込みです。
なお、上記見通しは、油価(ブレント)を、1バレル当たり第1四半期平均で77米ドル、第2四半期平均で75米ドル、第3四半期平均で75米ドル、第4四半期平均で73米ドル、通期平均で75米ドル、為替レートを、年度を通じて1米ドル153円として算出しております。
5.利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当
2022年2月に公表しました「長期戦略と中期経営計画(INPEX Vision @2022)」でお示しした還元方針においては、2022年度から2024年度の中期経営計画期間中は、総還元性向40%以上を目途とし、1株当たりの年間配当金の下限を30円に設定するなど、安定的な配当を基本としつつ、事業環境、財務体質、経営状況等を踏まえた自己株式取得を含む、業績の成長に応じた株主還元の強化に取り組むことを基本方針としておりました。
上記還元方針を踏まえ、当事業年度の剰余金の配当につきまして、普通株式の期末配当金は1株当たり43円とし、中間配当金の1株当たり43円とあわせ、1株当たり年間86円を予定しております。また、甲種類株式(非上場)の期末配当金は1株当たり17,200円とし、中間配当金の1株当たり17,200円とあわせ、1株当たり年間34,400円を予定しております。
2025年2月13日公表の「2025-2027 中期経営計画」でお示しした株主還元方針において、2025年度から2027年度の中期経営計画期間中は、1株当たり年間90円を起点とする累進配当による安定的な還元に加え、事業環境や財務・経営状況を踏まえつつ機動的な自己株式取得も行うことで総還元性向50%以上を目指し、業績の成長にあわせて株主還元を強化していくことを基本方針としております。
次期の配当予想額につきましては、普通株式は1株当たり中間配当金45円、期末配当金45円の1株当たり年間90円を予定しております。また、甲種類株式は1株当たり中間配当金18,000円、期末配当金18,000円の1株当たり年間36,000円を予定しております。
なお、2013年10月1日を効力発生日として普通株式1株につき400株の割合で株式分割を行っておりますが、甲種類株式につきましては、株式分割を実施致しておりません。これに伴い、甲種類株式の配当については、当該株式分割前の普通株式と同等になるよう、定款で定めております。