ドロマイト貯留岩の成因解明による油田開発最適化

ドロマイトは地球上で普通に認められる鉱物の一つであり、油ガスを胚胎する貯留岩を構成する鉱物として重要です。
ドロマイトは古くから学術的に研究されてきましたが、常温・常圧下での実験によるドロマイトの生成に人類は未だ成功していないため、その成因に関しては不明な点が多く残されています。ドロマイトの形成には複数のモデルが提唱されており、その形成過程で貯留岩性状は良くなる場合もあれば悪くなる場合もあり、単純ではありません。
当社では、アラブ首長国連邦アブダビ沖の巨大油田で貯留岩を形成しているドロマイトに着目し、日本の大学との産学連携による共同研究で、学術的な地球化学的手法と当社が得意とする貯留岩性状評価手法を融合し、ドロマイト貯留岩の成因の解明に取り組んでいます。このような取り組みにより、油ガス田におけるドロマイト貯留岩の貯留岩性状の空間分布を明らかにし、それに基づいて掘削する井戸の位置やデザインを最適化することで、油ガスの効率的な回収を目指しています。

参考文献

Yamamoto, K., Ottinger, G., Al Zinati, O., Takayanagi, H., Yamamoto, K. and Iryu, Y., 2018. Geochemical, petrographical, and petrophysical evaluations of a heterogeneous, stratiform dolomite from a Barremian oil field, offshore Abu Dhabi (United Arab Emirates).
Available at: https://archives.datapages.com/data/bulletns/2018/01jan/bltn17016/bltn17016.html

Yamamoto et al., 2018

地下評価への機械学習適用

技術の進展により、地下地質に関しては比較的質の高い、多くの情報が得られるようになりました。しかしながら、依然として地下から入手できる情報には限りがあり、地下地質の評価に際しては、その精度向上と不確実性低減のために未だ多くの人手と費用が費やされています。
当社では、地下評価の精度向上・効率化を目指し、近年目覚ましい発展を見せる機械学習を適用した地下評価手法の開発に取り組んでいます。取り組みとしては、地震探査データから地下の弾性特性を逆解析する手法(Seismic inversion)や、その結果からさらに岩相や貯留岩性状を解析する手法(Quantitative seismic interpretation)の改良などがあります。
従来のSeismic inversion手法では、地震探査データに欠けている低周波成分を補完するモデルを既存坑井等から作成した上で逆解析することが一般的です。この際、坑井から離れた位置での低周波モデル作成の自由度が大きく、かつ低周波モデルが逆解析結果の精度を大きく左右するという課題がありました。また、Quantitative seismic interpretationにおいては、弾性特性と岩相や貯留岩性状との間の直接的な関係を元に解析するため、岩相の出現パターンなど既知の関連地下情報を解析に組み込むことが難しいという課題がありました。当社 では、こうした従来の解析手法に機械学習を導入し、低周波モデルへの依存度を低減させ、かつ既知の地下情報を統合的に扱える解析手法を開発しています。

Desaki et al., n.d.

参考文献

Desaki, S., Kobayashi, Y. and Fatwa A., n.d. Seismic inversion method using convolutional neural network: A case study from the Abadi field.
T. Yamatani and S. Desaki, (2023), "Lithofacies prediction from seismic data using deep learning: A case study from North West Shelf Australia," The Leading Edge 42: 773–781.

分散型音響センシング(DAS)技術の地下モニタリングへの応用

地球温暖化対策として注目される二酸化炭素回収・貯留(Carbon dioxide Capture and Storage; 以下CCS)技術では、地下に貯留された二酸化炭素(以下CO2)の状態や挙動を正確に把握することが極めて重要になります。INPEXは、日本エネルギー・金属鉱物資源機構とともに、陸上の枯渇油ガス田を対象とするCO2による原油回収促進技術のための実証試験(以下CO2EOR実証試験)を実施し、その中で将来的なCCS事業への適用を視野に、最先端の地下モニタリング技術である分散型音響センシング(Distributed Acoustic Sensing; 以下DAS)技術の実用性を検証しました。
DAS技術は、光ファイバーケーブルをセンサーとして用いることで、地下の状態をリアルタイムかつ高精度に監視することを可能にします。CO2EOR実証試験では、新たに掘削した2坑井にDAS用の光ファイバーケーブルを設置し、地表発震による地震探査データを両坑井で同時に取得しました。これらのデータを統合処理することで、詳細な地下構造イメージの取得と速度モデルの構築に成功しました。加えて、本実証では世界初の試みを推進し、その一例としてDAS技術を用いた坑井間地震探査を実施し、従来の地震探査の解像度を超える詳細な地下構造の把握に向けた新たな可能性を示しました。

参考文献

Nakayama, S., Yamada, Y., Fujita, K., Mouri, T., Bettinelli P., Le Calvez, J., Maehara, Y., Mizuno, T., Armstrong, P., Podgornova, O., Bidyck, R., Rahmat, M. I., and Hill, D. 2024, Diverse applications of DAS and their added values: A case study from Minami-aga pilot CCUS project, onshore Japan.

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