皆様には、平素より私どもINPEXグループの事業活動についてご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございます。

経営理念に掲げる通り、私たちが目指しているのは、エネルギーの開発・生産・供給を安定的で持続可能な形で実現し、より豊かな社会づくりに貢献することです。

エネルギー業界を取り巻く環境は、近年大きく変化しています。数年前までは、気候変動への対応として脱炭素へのトランジション(移行)をいかに進めていくか、ということが課題の中心でした。しかしウクライナ情勢を踏まえた石油・ガス価格の高騰と需給逼迫の状況から、改めてエネルギーのセキュリティ(安全保障)とアフォーダビリティ(量的・価格的に安定した供給)の確保が重視されるようになり、これらをサステナビリティ、すなわち脱炭素化に向けた環境配慮とのバランスを取りながら同時に進めていくことが必要である、との考え方が広く理解されるようになりました。加えて、昨今の不安定な中東情勢や各国における新政権の発足などにより、世界各国でエネルギー及び環境政策が一変する可能性もあり、エネルギーをめぐる不確実な事業環境に一層備えていくことが必要です。

このような中で、天然ガスやLNGは、化石燃料の中でも石油や石炭より燃焼時のCO2排出量が少ないエネルギーとして、長期にわたり重要なエネルギーとして活用していく、ということが現実的な解決策として広く認識されるようになってきています。

一方、ネットゼロカーボン社会に至る道筋についての認識にも変化が生じています。ネットゼロを目指すという方向性に何ら変更はないものの、そのスピードや手法は、国・地域によって異なる事情や状況が反映されるべきであり、現実的で多様な道筋が認められるべきであるという認識が拡がってきました。また、旺盛なAI需要などに対応するため、世界全体で電力需要が増加していくというトレンドが中長期に続いていく可能性があり、安定した効率の良い電力供給システムが今後一層重要となるとともに、システムの維持や高度化に必要な鉱物・希少資源が一層重要になってくるものと考えられます。

これらの変化を踏まえ、私たちINPEXは、2025年2月13日に「INPEX Vision 2035」及び「中期経営計画2025-2027」を発表いたしました。

2035年に向けて、まずは既存プロジェクトの安全・安定操業を最優先し、「エネルギーの安定供給」という責務を果たして参ります。特に天然ガス及びLNGについては、INPEXが操業主体(オペレーター)を担うイクシスLNGプロジェクトを含めた数々の事業で培った過去40年以上にわたる経験を活かして、2030年代初頭に「アバディLNGプロジェクト」の生産開始、2030年代前半に「イクシスLNG拡張プロジェクト」の実現を目指します。

同時に、これまでにINPEXが培った組織能力や既存技術を活かしながら、総合エネルギー開発企業として、CCSや水素をコアとした低炭素ソリューション事業、更にはINPEX「ならでは」の力を活用した電力関連分野などの新規分野での事業展開を目指します。

以上の活動を通じて、世界中でネットゼロに向けたエネルギー移行が進む中、より低炭素なエネルギーの安定的な供給と、持続可能で地球環境に配慮した「責任あるエネルギー・トランジション」を目指して参ります。

「地球の力で未来へ挑む」、これがINPEXの新たに策定したブランドメッセージです。ここには、INPEXのもつ他社とは差別化された技術や知識、更には経験をベースに、長期的な視点でエネルギー供給を支え、持続可能な未来の実現を目指しつつ、グループ全体の企業価値を向上させていく、という強い決意を込めさせていただきました。

皆様方におかれましては、今後とも一層のご指導を賜りますようお願い申し上げます。


株式会社INPEX
代表取締役社長

上田隆之