今般策定したINPEX Vision 2035「責任あるエネルギー・トランジション」は、経営環境の変化を踏まえつつ、2035年に向けた当社の長期戦略の策定とともに、2025年から2027年までの3年間の中期経営計画を策定し、当面の具体的な取り組みと目標を示しております。
世界中でネットゼロに向けたエネルギー移行が進む今、当社はこの「INPEX Vision 2035」に基づき、より低炭素なエネルギーの安定的な供給と、持続可能で地球環境に配慮した「責任あるエネルギー・トランジション」を目指しています。

下記PDFでより詳しくご覧いただけます。

2035年に向けてINPEXが実現していくこと

成長の源泉である既存プロジェクトを一層強化します

安全・安定操業を最優先し、エネルギーの安定供給と同時に、株主還元・成長投資の原資を確保します。

将来の飛躍を現実のものにしていきます

「現実的な移行期の燃料」としての天然ガスの供給力強化を軸に、相乗効果/補完効果が期待できる低炭素分野や電力関連の新たな取組みを強化し、収益基盤を拡大すると同時に2050年ネットゼロに向けて前進します。
コアエリアを中心に事業基盤を拡大し、業績の成長にあわせて株主還元を拡大していきます。

成長軸1
天然ガス/LNG事業の拡大
イクシスLNGプロジェクトでは、安全・安定操業を継続した上で、液化能力拡張を目指します。
アバディLNGプロジェクトでは、30年代初頭の生産開始を目標に中計期間中のFID※1を目指します。
LNGトレーディング機能を強化し、より柔軟なLNG供給を実現します。
早期マネタイズが可能な有望地域で探鉱を継続します。
成長軸2
CCS/水素をコアとした低炭素化ソリューションの提供
これまでに培った組織能力・既存技術を活かし、エネルギーの低炭素化に取組みます。
当社が参画する天然ガス/LNGプロジェクトとCCSの組み合わせによるGHG排出抑制に加え、第三者向けのGHG削減ソリューションの提供やクリーン水素の供給を推進します。
成長軸3
INPEX「ならでは」の強みを活かしたエネルギー・資源分野での新たな挑戦
総合エネルギー開発企業として、電力関連分野での事業展開を目指します。
再エネに蓄電池やクリーンガス火力発電※2といった調整電源を組み合わせ、クリーンかつ高付加価値な電力供給体制の発展に貢献します。
電力供給システムを支えるために必要となる、石油・天然ガス以外の地下資源回収にも挑戦します。
  • ※1
    最終投資決定(Final Investment Decision)のこと
  • ※2
    CCSと組み合わせることやクリーン水素と混焼/専焼させることでGHGの排出を削減することを目指す

2035年にありたい姿:60-60を目指して

事業規模を60%拡大します

INPEXは、イクシスの生産開始やアブダビでの事業拡大を通じて過去10年間で大きく成長を遂げました。次の10年も、アバディやイクシスの拡張といった仕掛中案件を収益性を確保した上で実現し、成長を続けます。

GHG排出原単位を60%削減します※2

INPEXは、生産プロセスの見直し等の努力を積み上げることでGHG排出原単
位を確実に削減してきました。次の10年は、CCSを通じてインパクトのある削減を実現すると同時に、社会全体の低炭素化へ貢献していきます※3

  • ※1
    過去・将来ともに外部事業環境を一定とした場合の概算値(2025年以降はコスト・売上ともに2.3%/年のインフレーションを考慮)
  • ※2
    2019年比の削減目標(Scope 1+2。現在の経済環境と合理的な予測を反映したものであり、技術進展、経済合理性、各国・地域の施策実現等の事業環境を前提としている)
  • ※3
    2019年時点で操業していたプロジェクトについては絶対量ベースでの排出量削減を目指す。また、サプライチェーン上のステークホルダーと協働しScope3削減の取組みも並行して進める。加えてCCS、水素、再エネ事業等を通じて、社会に対し820万トン/年程度の削減貢献(製品・サービスを通じて当社が社会のGHG排出削減に貢献した量)創出を目指す

成長軸1:天然ガス/LNG事業の拡大

INPEXは、過去40年以上にわたる経験を活かし、天然ガス/LNG事業をオペレーターとして上流から下流まで一気通貫で行っている世界でも数少ない会社の一つです。2035年に向けた次の成長の柱として、アバディLNGプロジェクトとイクシス拡張プロジェクトの実現を目指します。

成長軸2:CCS/水素をコア技術とした低炭素ソリューションの提供

よりクリーンな天然ガス/LNG事業を実現するため、CCSを通じインパクトのあるGHG削減を行います。
更には、第三者に対してもCCS/水素をコアとしたGHG削減ソリューションを提供し新たな収益源とすることを目指します。

CCSは、INPEXが培ってきたノウハウを活かせる
GHG削減技術です

CCSとは、石油ガスの生産時や利用時に排出されるCO2を回収し、地中深くに貯留する技術のことです

※1
当社権益分

CCSには、インパクトのあるGHG削減のポテンシャルがあります
自社のGHG削減に加え、第三者にGHG削減ソリューションを提供します

2035年に向けた取組みの進化/深化の方向性

成長軸3:INPEX「ならでは」の強みを活かしたエネルギー・資源分野での新たな挑戦

石油・天然ガス事業に次ぐ新たな収益源獲得を目指し、電力事業およびその周辺分野での事業展開に挑戦します。

石油・天然ガス以外の地下資源回収

  • ヨウ素の供給を通じ、次世代のペロブスカイト太陽電池の普及を支援
  • かん水からの金属資源や、その他の地下鉱物・希少資源の回収等、INPEX「ならでは」の地下技術やノウハウを活かせる分野での資源ビジネスに挑戦
鉱物や金属を含んだ地下水のこと

電源ポートフォリオの多様化と需給調整能力の強化

  • 電力事業の主要な取組みである再エネは、技術的な強みのある分野かつコアエリアを中心に継続し収益改善・拡大に取組む
  • 既存のガスパイプラインネットワークを通じた燃料供給と一体で、将来の水素混焼/専焼化やCCS実装の可能性を含めたクリーンなガス火力発電の事業機会を追求
  • 出力変動への対応が必要な再エネと調整電源(蓄電池/ガス火力)の組み合わせを最適化し、発電アセット全体の価値最大化に取組む

電力多消費産業への貢献

  • データセンター等の電力多消費産業に対し、供給エネルギーの効率化・クリーン化の機会を提供

(ご参考)前 Vision/中計からの進化

前 Vision/中計の概要

  • 1.
    2050年にネットゼロを目指す
  • 2.
    5つのコアエリア※1
  • 3.
    石油・天然ガス事業と低炭素化事業の両立を目指し、ネットゼロ5分野を設定

新 INPEX Vision 2035の概要

  • 1.
    2050年にネットゼロを目指す(変更なし)
  • 2.
    5つのコアエリアに加え、北米で低炭素化ソリューションや電力関連分野の事業機会を追求
  • 3.
    3年間の経験を踏まえ、2035年時点の事業規模拡大と低炭素化にインパクトのある貢献を見込む分野に注力し、分野間のシナジーを意識した実行方法に進化させる
  • ※1
    豪州・アブダビ・東南アジア・日本・欧州の5エリア
  • ※2
    メタネーション等の取組みも含む

成長と株主還元のバランスの取れた資金配分を実行します

過去3年間で有利子負債の削減が進んだことから、2025~27年の3年間では、成長投資と株主還元を一層強化していきます。
成長投資においては、株主価値拡大に貢献する案件に絞り込んだ上で投資します。

株主還元を更に強化していきます

  • 配当による安定的な株主還元をベースとしつつ、状況に応じ機動的に自己株式の取得も実施

投資規律を遵守した上で積極的な成長投資を行います

  • 天然ガス/LNG分野を中心に、インパクトのある成長を追求
  • 投資CFの2割程度を低炭素分野と電力関連分野に投資することを想定するものの、投資に移行する段階でプロジェクトの採算性を厳正に評価
  • スピード感のある成長を実現するための手段として、アセット買収やM&Aを通じた成長機会も積極的に追求。その際、当社が保有する操業施設や組織能力とシナジーが見込まれることを精査した上で実行

現時点での有力な投資案件

  • 既存プロジェクトの維持・拡大:11,000億円程度
  • 天然ガス/LNG事業のクリーンなかたちでの拡大※2:5,000億円程度
  • CCS/水素や電力事業およびその周辺分野:2,000億円程度
    (その他、10,000億円~の潜在的投資案件が存在)
  • ※1
    油価$70/bbl、為替135円/USDの場合の概算値
  • ※2
    LNGプロジェクトと一体のCCS関連投資を含む

主要経営指標の目標値

プロジェクトの安全で安定な操業を継続し、確かな収益基盤を維持します。
アバディをはじめとした複数のプロジェクトを中計期間中にFIDし、’30年代の飛躍のための足場固めを行います。
持続的に株主還元を強化するとともに、事業の進捗状況をタイムリーかつ積極的に開示します。

指標 中計期間中の目標
重大な事故※1 ゼロ
株主還元 中期経営計画期間中(2025~2027年)は90円を起点とした累進配当を実施
総還元性向※250%以上を目指す
3年間累計の営業CF 22,000億円以上
油価 $70/bbl、為替レート 135円/USDの前提
GHG排出原単位※3

2027年に2019年比で35%削減を達成

ROE 株主資本コストを上回ることを目指す
ROIC WACCを上回ることを目指す
  • ※1
    オペレータープロジェクトにおける、死亡事故、重篤負傷、重大漏洩(PSE Tier 1)
  • ※2
    配当支払額と自己株式取得予定額の合計金額÷当期利益
  • ※3
    Scope1+2